やることリストを丸ごと貼ったら、AIは「終わらせます」と言って数字が空欄の資料を返してきた
「ありがとうございます。4件とも、これで終わらせます。」
朝のやることリストを丸ごとClaudeに貼り、返ってきた質問に答えたら、返事はこの一文から始まりました。質問が返ってきた4件のうちの1件、10時半の定例に持っていく資料はこうなっていました。
定例資料 〔日付〕
1. 先週の問い合わせ件数
項目 件数 先週の問い合わせ件数 〔 〕件 (比較用)前の週 〔 〕件 補足:〔件数についてひとことあれば〕
2. 来月の展示会に出るかどうか
- 展示会名:〔 〕
- 開催日:〔 〕
- 決めたいこと:出展するか、しないか
- 出る場合に必要なこと:〔費用・人手・準備物など〕
- 判断の期限:〔 〕
今日の定例で決めたいこと
- 展示会に出るかどうか(今日決めるのか、持ち帰るのか)
体裁は整っています。なのに、いちばん上に来るはずの先週の問い合わせ件数が「〔 〕件」のまま。展示会の名前も開催日も空いています。これを持って会議室に入っても、話せることは1つも増えていません。
この資料ができるまでに、AIは僕に質問を1つしています。AIは何を聞いて、何を聞かなかったのか。
貼ったのは、朝に書きなぐった12行
渡したリストの一部です。
サンプル商事 見積 再送(田中さん 金曜の件)
経費精算 今月分 〆今日
牛乳 卵 食パン
10:30 定例 資料まだ
歯医者 予約取り直し
部長に先週の数字の件ひとこと
山田さんに返信 会議室の件
ふるさと納税 どこにするか
請求書 PDF 2通 ファイル名そろえる
シャンプー切れそう
ほかに「クリーニング 受け取り 19時まで」「母に電話 週末のこと」があって、全部で12行です。リストも、会社名も人名も架空です。
頼んだのは、1件ずつ3つに分けてもらうことです。Aは今この会話の中で終わらせられるもの、Bは僕があと1つ答えれば終わるもの、Cは自分でやるしかないもの。Aはその場で作ってもらい、Bには質問を1つだけ返してもらいます。
貼る前に、書いた本人の立場で予想を保存しておきました。ほとんどが買う、行く、電話する用事です。AIに片付けられるのはせいぜい「山田さんに返信」の1件で、残り11件は自分でやるしかないと見ていました。
12件のうち、片付いたのは4件
AIの分け方は、Aが3件(見積の再送、牛乳・卵・食パン、シャンプー)、Bが4件(定例の資料、部長へのひとこと、山田さんへの返信、請求書のファイル名)、Cが5件でした。
「片付いた」と数えたのは、成果物が出ていて、直す箇所が2か所以内で、リストにも僕の答えにもない日時・金額・名前・約束をAIが書き足していないものだけです。
その場で片付いたのは買い物リストの2件で、見積の再送メールは空欄が6か所あったので、片付いた数には入れていません。Bの4件は、リストを書いた架空の本人になったつもりで僕が質問に答え、山田さんへの返信と請求書のファイル名の2件が片付きました。部長へのひとことには頼んでいない「今週の数字に反映される見込みです。」が足されていて、部長への約束になる一文なので、片付いた数から外しました。
合わせて12件中4件。予想の1件よりは多い。ただ、片付かなかった側に、朝いちばん困る1件が入っていました。
聞かれたのは「話したいこと」だった
定例の資料に対して、AIが返した質問はこれです。
定例で話したいことを、書きなぐりのままでいいので並べてもらえますか?(1枚の資料の形に整えます)
僕の答えは「先週の問い合わせ件数と、来月の展示会に出るかどうか。」。質問への答えとしては過不足ありません。AIはそれを受けて、議題2つの枠をきっちり作りました。
足りなかったのは議題ではなく、数字そのものでした。資料に要るのは「問い合わせ件数を話す」ことではなく「先週は何件だったか」です。最初の質問はそこを聞いておらず、聞かれていないので答えにも入りませんでした。
プロンプトには「1つでは終わらなさそうなものはBに入れず、Cに入れてください」と書いてあったのに、この資料はBに入り、答えを受け取ったあとも空欄を残したまま「終わらせます」と言いました。AIの「終わった」は形ができたという意味で、僕の「終わった」は会議室に持っていけるという意味だった。ずれていたのはそこです。
Bの一行を変えたら、下書きも消えた
それなら、Bに入れる条件を厳しくすればいいはずです。プロンプトのBの一行だけを「僕が1つ答えれば〔 〕を残さずに仕上げられるものだけにしてください」という形に変えて、同じリストでもう1回試しました。
定例の資料は、狙いどおりCに移りました。理由は「何の定例で何を載せる資料なのか、こちらは知らない」。これなら朝のうちに、自分で数字を拾いに行くしかないと分かります。
ところが、Aが0件になりました。見積の再送メールも、空欄2か所で片付いていた買い物リストも、まとめてCです。返事には「この会話の中で最後まで終わらせられるものは、正直に見て1件もありませんでした。」とありました。空欄を残すなという条件が、Bだけでなく全体の物差しを引き上げたようです。
空欄を残したままの「終わらせます」は消えました。一緒に、その場で作ってくれていた下書きも消えました。
使い方のヒント
1回目に使ったプロンプトの全文です。最後の行の下に、自分のリストをそのまま貼ります。
下は今日の僕のやることリストです。書きなぐりのままです。
1件ずつ、次の3つのどれかに分けてください。
A:この会話の中で、今すぐ終わらせられるもの
B:僕があと1つだけ答えれば、この会話の中で終わらせられるもの
C:僕が自分でやるしかないもの
分けたら、Aは分類で終わらせずに、その場で実際に作ってください(文面、表、段取り、下調べなど、そのまま使える形で)。
Bは、終わらせるのに必要な質問を1件につき1つだけ書いてください。1つでは終わらなさそうなものはBに入れず、Cに入れてください。
Cは、なぜ僕がやるしかないのかを一言で書いてください。
リストに書いていない日時・金額・名前・約束は作らないでください。分からないところは〔 〕で空けておいてください。
--- ここからリスト ---
(リストを貼る)
効き目を確かめたのは2行です。「Aは分類で終わらせずに、その場で実際に作ってください」を抜いた版では、Aは「該当なし」で、その場で作ったものは0件でした。Anthropicのプロンプトの指針(API向けのページ)にも、「提案して」と頼むと実行せずに提案だけが返ることがあると書かれていて、分類だけで止まるのはそれと同じ形です。
もう1行がBの行で、差し替えるならこうなります。
Bは、僕が1つ答えれば〔 〕を残さずに仕上げられるものだけにしてください。質問は1件につき1つだけ。答えても空欄が残りそうなものはCに入れてください。
元の行なら下書きを多めに作ってくれる代わりに「終わった」と言いすぎ、差し替えれば仕分けは正直になる代わりに、その場で作ってくれるものがなくなりました。下書きがほしい朝は元の行、「終わった」をそのまま信じたい朝は差し替えた行です。
「質問を1件につき1つだけ」は質問攻めを防ぐため、「〔 〕で空けて」は作り話を防ぎ、直す場所を目で見えるようにするために入れています。定例の資料が終わっていないと気づけたのも、数字が〔 〕で残っていたからでした。
まとめ
空欄が6つの見積メールも、5か所以上の資料も、2つだけの買い物リストも、同じ調子で差し出されます。元のプロンプトで使うなら、区別がつくのは〔 〕の数だけでした。
自分でやるしかないと思っていた11件のうち、3件はAIの側で片付きました。そして1件、片付いたように見えて片付いていないものがありました。朝に確かめるべきなのは、後者のほうです。